ボクが日本へ本帰国してからまもなく丸6年が経ちます。この間にも中国でのデジタルの進歩は凄まじいスピードで進んでると感じています。先日、中国で試験運用されている「デジタル人民元」についての記事を見て少し気になったため、取り上げてみることにしました。
現在はボク自身が中国にいないうえに専門家でもないため、これらは記事を読んだ個人的な解釈と感想なのでご了承下さい。間違った解釈をしているようであれば、ご指摘頂けますと幸いです。
中国における電子マネーの普及
まず最初に挙げなければならないのが、アリババグループのオンライン決済「アリペイ」です。2004年開始のこのサービスは、当初アリババが運営するオンラインモール「淘宝網(タオバオワン)」の決済手段(PayPalのような方法)として始まり、その後QRコード決済へと進化していきました。
そのアリペイと並ぶQR決済が、腾讯(テンセント)が運営している微信(ウイチャット)の「微信支付(ウイチャットペイ)」で、2013年8月に登場してからすでに9年が過ぎました。こちらはコミュニケーションアプリからの進化であり、日本でよく知られているLINEとの比較がしやすいこともあるので「ウイチャット」を主にお話したいと思います。
ボクが知る2000年代のテンセントは「QQ」というサービスで、チャット機能は中国版SKYP、メールは中国版オンラインメールをリリースしている会社というイメージでした。中国においてQQは送信速度や容量がかなり有利だったので中国人スタッフは普通に利用していましたが、日本人(みんながそうではないのですが)はどちらかというと、QQは危ないからと言って避け気味だったような気がします。
そのテンセントが2011年に開始したサービスが「微信(以下ウイチャット)」でした。それまで「短信:SMS(電話番号に紐づいているショートメッセージ)」が主流だった通信手段が一気にウィチャットへ移行し始めました。日本では同年2011年に半年ほど遅れて「LINE」がリリースされていたようです。当時は日本にいなかったのでLINEがどれくらい普及していたのかはわかりませんが、中国の人口から考えてもウイチャットの勢いのほうがスゴかったのではないかと思います。
LINEが「LINEペイ」をリリースしたのは2014年12月だそうで、ウイチャットペイより1年以上遅れてのリリースです。中国では2015年頃にはすでに多くの人がウイチャットペイ(微信支付)を利用していましたが、ボクの肌感覚でいうと日本で本格的にQR決済が普及したのは「PayPay」がリリースされた2018年以降ぐらいではないかと思います。これに関してはアプリの利用人口の差に加え、スマホの普及率や現金への信頼(中国はニセ札が多い)など、電子マネー自体が普及する環境が異なっていたことも原因のひとつではないかと思います。この時点でもう3年ほどの差がついています。
意外と知られていないかも!?「QRコード」は日本発
ちなみに今では当たり前に使われている「QRコード」は自動車部品メーカーのデンソーさんが1994年に開発したものです。元々トヨタの「カンバン方式」のために開発されたそうです。そのQRコードが本格的に普及したのは、テンセントやアリババといった中国の企業が電子決済にうまく取り込んだことによるもので、特に中国ではQRコードが日本発のものと知らない方は多いのではと思います。
このQRコードの決済方法が普及したことにより、コードさえ発行できれば誰とでもおカネのやり取りが出来るようになりました。中国では路上であろうがどこで販売しようが、QRコードさえ出しておけば代金を回収できるため、多くの人が使うようになりました。2016~2017年頃は日本でそういった中国の報道もされていましたね。ただ手軽さゆえに当初はこっそりとQRコードをすり替えたりする事件も起こったりと、リスクが伴うこともありました。
QRコードが開発され30年近く経つわけですが、現在では「フィンテック(フィナンステクノロジーの造語)」を支える技術の一つになっています。
中国が進めるデジタル通貨
現在では日本でも「●●ペイ」といった民間企業がプラットフォームとなっている電子マネーが普及してきましたが、中国ではすでにその先を行く「デジタル人民元」の試験運用が始まっています。
中国に家族を持つものとしては、これまでのものと何が違うのかが気になったので少し調べてみました。ボクなりの解釈で簡単にまとめました。
- 民営会社の電子マネーではなく、国が推進している法定通貨であること。
- 民間のオンラインアプリを介すのではなく、あくまで現金を電子化したもの。
- ネット環境がなくても現金と同じように資金移動が可能。
つまり「現金という形あるものが電子マネーという形のないものに置き換わっただけで、ある意味現金と同じ」ということなのですが、これだとこれまでの電子マネーとどこが違うのかがわからないので、もう少し簡単に言うと「中国という国がブランド(人民銀行)でピッと電子決済できるお財布(キャッシュカードやデビットカード、プリペイドカードなど)」のようなものかとボクは理解しています。
これまでの電子マネーはアプリ経由となるため、スマホや電子機器を持っていない、使えない、ネット環境がない、と利用できなかったのですが、デジタル人民元はネット環境なしでいつでもどこでも誰でもお財布に現金が入っているかのように使用できるうえにリアルタイム送金、手数料ゼロということが最大のメリットのようです。
ただ最初のデジタル口座開設時は専用アプリをスマホにインストールし情報入力する必要はあるようです。じゃあスマホを持ってない場合はどう開設するんでしょうね。
シーンに合わせたあらゆる形のハードウォレット
先ほどもご説明しましたがこのデジタル通貨のメリットは、ネット環境がなくてもチップが埋め込まれているものであれば決済が可能ということです。よってデジタル機器じゃなくても良いということになります。
そのため人が普段おカネを支払うシーンを想定したチップを埋め込んだ商品がドンドン開発されているようです。今では電子決済に定番となっている腕時計だけでなく、お年寄りの持つ杖やウインタースポーツ時に便利なグローブなどシーンに合わせた商品なども展示会では出展されていました。またキャッシュカードサイズのものは残高表示されるなど、まるで財布のような感覚で安心して利用できるとのことです。日本的に例えると「日本のあらゆるところで使え、残高表示される交通系カード」みたいなイメージなのでしょうか。万が一の場合もチップにチャージした金額までの被害で済むことも、チャージは面倒ではあるけど安全ですね。
下記の情報は1年近く前の2021年9月のものなので、今ではもっといろんなパターンのものが開発されてるのかもしれませんね。
いつの間にか利便性と引き換えに個人情報を提供
少し話が飛躍しますが・・・。
個人の情報や資産はあまり知られたくないというのが一般的かもしれませんが、結局のところ何らかの形で管理されています。おカネに絡むクレジットカードやいろいろなアプリも「使う側が利便性と引き換えに個人情報を提供」しているということになりますし、「無料」なものほどその傾向が強いのかと思っています。
上でも少し触れましたがQR決済の普及スピードは、個人情報云々よりも利便性を取る中国国民と、便利だとしても情報を出したくない日本国民の差があったからではないかと思っています。また中国では現金に対する信用度(偽札が多い)が低いこともありますが、逆に日本は現金を安全で便利に使うためのインフラ(ATM、券売機、自販機など)が整いすぎて、いきなりデジタルへシフトするにはそれらにかかわる企業への影響が大きかったこともひとつかと思っています。
現在、普及のためにいろいろなキャンペーンを展開している「マイナンバーカード」も同様、個人情報を集約させることが目的だと思います。今は行政絡みのサービスが主なのであまり活用の場がないのですが、いずれ金融やサービス関連などとの連携が進むことにより生活インフラのほとんどが「マイナアプリ」ひとつあれば便利な環境になり、持たないと不便になる時代が来るのだろうと思います。
そうなるとすべてが掌握されたような気にもなりますが、完璧なアナログ生活でもしない限りは調べればわかることなので個人的にはその方向性に進むことは否定しません。それ以上に重要なのは「その情報を行政がどこまでしっかりと管理できるか」で、そこを解決していくことが一番難しいのではないかと思っています。
いずれは国民全員に生体情報登録を義務化してすべてを「生体認証」で、と言った時代が来るのもさほど遠くないような気がします。
気がつけばなんか堅い話になってしまいましたね。
現時点でのボクのデジタル人民元への理解はまだまだこのレベルですが、中国の家族のこともあるので少しずつ勉強していこうと思っています。
昔に投稿した人民元に関する記事をピックアップしてみましたので、ご興味あればこちらもどうぞご覧くださいませ。